「冬の華」に続き、倉本聰が高倉健を想定して書いた脚本を降旗康男監督が映画化したヒューマン・ドラマ。
北海道を舞台に、元射撃選手である殺人課の刑事と3人の女性を巡る物語を三章建てにして描く。
撮影は木村大作。
(1981、132分)
~登場人物~
①主人公
・三上(高倉健):東京オリンピックの(元)射撃選手で、殺人課の刑事。
②親族
・元妻【直子】(いしだあゆみ):英次と離婚し、4歳の息子(岩淵健)を連れ銭函駅で別れる。
・母( 北林谷栄)
・兄( 藤木悠)
・弟( 永島敏行)
・妹(古手川祐子):叔父が進める見合い相手、北見枝幸に住む男(名倉良)と結婚する。
③雄冬の人
・英次の幼馴染(田中邦衛)
・その弟(小松政夫):英次の妹を好いていた。
④増毛の人
・【桐子】(倍賞千恵子):赤提灯の灯る小さなおでん屋「桐子」を一人で営む。腐れ縁の男がいる。
・通り魔(根津甚八):妹想い。
・その妹【すず子】(烏丸せつこ):兄想い。少し、頭が弱い。駅前の「風侍食堂」で働く。
・町のチンピラ(宇崎竜童):すず子を孕ます。
・殺人犯"指名22号"( 室田日出男)
⑤警察関係者
・先輩刑事、五輪強化チームのコーチ(大滝秀治):検問中に撃たれる。
⑥その他
・列車の客 (武田鉄矢)
・立て籠り犯( 阿藤海)
~三章からなる物語~
①【1968年1月 直子】
・銭函駅
・札幌市内地下鉄西11丁目駅など
「これ以上走れない…」←東京オリンピック三位のマラソン選手・円谷幸吉の遺書。
②【1976年6月 すず子】
・増毛駅
・上砂川駅
③【1979年12月 桐子】
・旭川刑務所からの手紙
・増毛駅
「この唄好きなのよ」
「樺太まで聞こえるかと思ったぜ」
殺人課の刑事である高倉健は、仕事とはいえ、凶悪な犯人を射殺したり、逮捕後に犯人が有罪となり死刑を求刑されるという形で人の命を奪う。
また、一介の刑事に過ぎないので、上司の命令には黙って従う。
仕事で札幌に住んでいるが、暮らすなら田舎である故郷の方がよいと思っている。
そして、女性に対しては愛を語らない。
そんな男の人生の断片を描いた物語です。
銭函、増毛、雄冬などにある駅や港などの風景、冬の厳しい自然が背景になっていて、鉄道ファンじゃなくても楽しめる。
八代亜紀の代表曲「舟唄」が印象的に使われ、おでん屋の長回しのシーンでしっとりとした情感を漂わせる。
なお、桐子役は当初倍賞美寿子にオファーされたが、妹である千恵子が台本を気に入り、どうしてやりたいと、姉から役を譲ってもらったようだ。しかも、所属する松竹に対し出演を許さなければ辞めるとまで言ったとのこと。高倉健を相手に山田洋次作品とは違ったタイプの役をやりたかったのですね。