朝田

その女を殺せの朝田のレビュー・感想・評価

その女を殺せ(1952年製作の映画)
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見た後マジで面白いしか言えなくなる。「面白い映画とは何か?」という簡単に聞こえて、その実かなりの難題に対するリチャード・フライシャー先生によるあまりに的確な回答。緻密な脚本、キビキビとした話運び、列車という密閉された狭い空間を生かした無駄の無い演出。適度に挟み込まれる脱力感漂うユーモアなど映画を面白くする最低限の要素だけが高い純度で融合した傑作フィルム・ノワール。50年代のアメリカの娯楽映画の良さはノワールに限らずたいてい「90分以内」という簡潔さだと思う。そういう意味で、「簡潔さ」においてこの作品に勝るアメリカ映画は中々存在しないのではないか。時折用いられるハンディが物凄く効果的で、特に主人公とマフィアの部下との暴力シーンのブレまくるカメラの生々しい臨場感たるや。ミニマルで、しかも洗練されてはいない泥臭い動きが暴力を迫力と共に切れ味良く見せる。台詞も最小限に抑えられ、人物同士の視線のやり取りだけで緊張感を持続させていく。ベストシーンは主人公が守っていた女の警官が殺されるシーン。直接的な撃たれる姿ではなく、クローゼットの鏡を用い、倒れるまでをワンカットで捉え、そのままレコードからジャズが流れ出す。全ての段取りが鮮やか。話のスピード感だけではなく、光と影が絶妙に混じり合うカッコ良いショットも満載。しかも暴力はド迫力で陰惨なのにも関わらずラストは爽快。ハリウッド映画のお手本となるような作劇が70分冴え渡る。映画はこの程度の要素で成立し得るのである。あまりにソリッドで、あまりにスリリングだ。