このレビューはネタバレを含みます
本作もまた監督好みの中流以下の市井の人々の物語である。今回も主人公のマルセルは靴磨きを生業として妻アルレッティを愛し慎ましく生きている。そこへ突如アフリカからの違法入国者少年イドリッサが現れる。
カウリスマキの他の作品同様、主人公に逡巡という「いとま」がない。目の前に困る者があれば迷わず助け、衣食住を与え、今回もイドリッサの母がロンドンにいると知るや密航の金額が高額であれば慈善コンサートを開き迷わずその金を充ててしまう。
今回モネ警視の心に何が作用したのかはわからないながら、そんな国の法律や決まりごとがどうあれ、自身が感じるところの正義に迷いのないマルセルには思いも寄らない奇跡が集まってくることだけがわかる。
押し付けがましくなくそれを観る側に伝えてしまうカウリスマキ作品はやはり素晴らしい。