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ル・アーヴルの靴みがきのpikaのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
3.5
キリスト教やフランスの社会問題など様々な暗喩が散りばめられているとのことだけど、分かれば「なるほどー!」と感心できるし分からなくてもカウリスマキ的人間賛歌を存分に楽しむことができる。

リアリズムな演出とは裏腹に寓話的なドラマになっているけど、主人公を始めスポットの当たる人々の視点は世界で最も多いであろう普遍的な人々の視点と同調し、1人の少年の運命を左右できるタクトが配られた時にどう行動するのかを問いているような感覚がある。
深く複雑で大変な問題だと理解していても直面しなければ自分の意思など影響しない離れた世界の出来事だ、と多くの観客自身がそう思っているであろう世界的な闇について、身近で同調しやすいキャラクター達が観客の代わりに直面し、ベタで青臭い展開であったとしても「こうでありたい」「こうしなければならない」と思わせるような強烈な意識を植えつけられる。
自然に映画に没入し同調することは、主人公たちの善意的な選択を人間の本質として素直に受け止め、危険を承知の上偽善や美徳といった下心もなく純粋な感情として肯定できるような暖かさがあり、そこに何十年と同じ視点から作り続けてきたカウリスマキだからこその魅力が滲み出ている。

「ラヴィ・ド・ボエーム」と同じ名前のキャラクター、マルセル・マルクスを演じているアンドレ・ウィルムの妻を演じるカティ・オウティネンのキャラクターがアルレッティとか、ベッケル医師とかレオのネタみたいなキャラクターとかフランス映画界へのオマージュも楽しい。
アイコンとして印象的だったリトルボムって知らなかったけど「ル・アーブルのプレスリー」(byカウリスマキ)らしい。