emily

ル・アーヴルの靴みがきのemilyのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
4.0
 フランスの港町 ル・アーヴル。駅前で靴磨きの仕事をしているマルセルは妻と愛犬とつつましいが幸せな日々を送っていた。あるとき不法移民の人々がコンテナの中から見つかる。その中の一人の少年が逃げ出し、マルセルと出会う。一方妻は余命宣告を受けていた・・

 ぱきっとした色彩、小さくて青い温かみのある色、そこに配置された人々の繋がりとぬくもり。町のカットはポストカードのように美しい構図に収められ、独特の間にユーモアをちりばめられている。

 近所の人たち、警察官、移民の少年、妻、どの人をとっても温かく大げさではなくマルセルに寄り添い、支え合い明るい色彩の中に溶け込む。移民問題、余命宣告などテーマは重いが、そこに係る人々の優しさの連鎖が、観客に緩やかな幸せな気分を与えてくれる。

 まるで奇跡としか言えないラストのくくりも、マルセルの人柄ゆえに引き起こした結末に思え、ありえないが自然と現実とちゃんと溶け合っている。見終わった後の満足感、胸にひろがるじわっと温かい気持ち。そうじんわりと心がぬくもる。人生捨てたもんじゃないと思わせてくれる。どんな気分の時にも寄り添ってくれる。人に優しくすることはその人を救う以上に自分を救うのだ・・・
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