ぴのした

ル・アーヴルの靴みがきのぴのしたのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
3.6
フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキの近年の代表作。移民問題をテーマにしながらもポップで洒落てて人情味あふれる映画。

舞台はフランスの港町ル・アーブル。靴磨きで生計を立てるマルセルは、ふとしたことからアフリカ難民の少年をかくまうことに。母親のいるイギリスへ行きたいという少年をなんとかしてやりたいと思うマルセルだったが…。

いやーわりと静かで動きの少ない映画なんだけど、渋い良さがあった。まず出てくる人がほんといい人しかいない。ツケでパンを買わせてくれるし少年を匿ったりしてくれる近所のパン屋のおばちゃん、マルセルのツケを嫌いながらもいざという時に助けてくれる八百屋、少年を探すのに躍起になりながらも結局は少年とマルセルの味方をしてしまう刑事…。みんな感情を大げさに表に出すようなタイプでもないし派手な動きもないんだけどさりげない優しさだったりユーモアだったりが垣間見える。

だれもが下町の貧乏暮らしでお互いに助け合ってるような雰囲気があって、そんな人達だからこそ少年を助けたいと思ったんだろうね。

日本の古い下町を描いた人情映画のエッセンスに近いものを感じた。カウリスマキは小津の影響を受けているらしいし、どこかしらそういう側面もあったのかもしれない。

カウリスマキは初めて観たけれどやはり北欧の人だけあって画面の色彩とか家具が洒落てる。

この映画また犬が可愛い映画なんだけど、家に帰ると奥さんがいて、犬を連れて食前酒に行くってなんだかパターソンみたいだと思ったら、カウリスマキはパターソンの監督ジム・ジャームッシュとも親交があるみたいでなるほどなぁって。