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ル・アーヴルの靴みがきの小のレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
4.0
アキ・カウリスマキ監督 “港町3部作”改め“難民3部作”の第1作目。難民を排除しようとする国家権力に団結して立ち向かう人情の厚い人々を描いた物語。2017年12月現在公開中の『希望のかなた』は本作に続く“難民3部作”の2作目になる。

北フランスの港町ル・アーブルの駅前で靴磨きをして暮らしているマルセル。妻アルレッティ、愛犬ライカとつつましく暮らしていた。ある日、港にアフリカからの不法移民が乗ったコンテナが漂着。逃げ出し警察から追われてた移民の少年イングリッサと出会ったマルセルは一も二もなく彼を助ける。一方、妻アルレッティは不治の病で入院することとなるが…。

冒頭のシーン、マルセルはある事件に巻き込まれたくないと我関せずを決め込むのだけれど、困っている人のためなら話は別。助けるため、即座に行動を起こす。そして、マルセルに協力を惜しまない周囲の人々。見ず知らずのたった一人の少年のために、多額の資金も粋な方法で集めるなど、彼らの人情は常軌を逸している。

つまり、過剰な表現によって、問題に無関心だったり、人間味の乏しい方向に流れていく風潮に一撃をくらわせる、そういうタイプの物語。ケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』も同タイプ。でも、同作に比べ本作は暗さを感じないというか、かなり明るめの印象。

理由は、①『わたしは、ダニエル・ブレイク』はダニエル・ブレイクが1人で権力に立ち向かうのに対し、本作は多くの人の力が結集すること、②『わたしは、ダニエル・ブレイク』は権力に虐げられている側の苛酷な状況が描かれているのに対し、本作は少年を救うことがメインだからか、それは所与のものとして描かれないこと、などかな。

だから、物語としてスッと入ってくる半面、ややもすると人情話感が強くなりがちで、下手をすると荒唐無稽にも思えるかもしれない(だからはじめのうちは「港町3部作」だったのかな)。けれど、自分の場合、難民の過酷さをキッチリ描いた『希望のかなた』を先に見て、しかも「難民3部作」という本作の位置づけをインプットしていたから、その点は良かった気がする。

●物語(50%×4.0):2.00
・わかりやすいストーリー、過剰な人情にメッセージが込められる。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・当たり前のように淡々と難民の少年を助けようとする人々の姿がカッコイイ。

●画、音、音楽(20%×4.5):0.90
・チャリティコンサートがイイ。
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