TaiRa

メルビンとハワードのTaiRaのレビュー・感想・評価

メルビンとハワード(1980年製作の映画)
5.0
以前、字幕なしで無理矢理観たが、今回やっと字幕付きで観ることが出来ました。中原さんありがとう。

大富豪ハワード・ヒューズの遺産相続人の一人として何故か名前が挙がった田舎のビンボー兄ちゃんメルビンの実話。一応、メルビンの証言が実際に起こった事として描かれる。結局、彼は一銭も貰えなかったらしいけど。この映画を生涯ベストに挙げてるポール・トーマス・アンダーソンへ与えた影響はとても大きい。砂漠でバイクぶっ飛ばすイカれジジイのハワード。盛大にぶっ転んで死にかけてるとこを通りすがりのバカことメルビンが助ける。夜のハイウェイを行きながら陽気な自作ソングを歌うバカと付き合わされるイカれジジイ。この車内の交流のハートウォーミングさ。タイトル『メルビンとハワード』なのに、ほとんどここしか出て来ないハワード・ヒューズ。あとはメルビンがカミさんと娘に愛想つかされて出て行かれたり、かと思えば直ぐにカミさんとヨリ戻したりの日常。カミさん演じてるメアリー・スティーンバージェンがとびきりキュート。旦那捨てて家を飛び出し、男にぶん殴られ、金はなくなり、ストリップで働いてるのに何故かへこたれない。店辞める時だってカラッと元気。ジョナサン・デミが80年代に生み出したヒロインっていつもポップで負けない。ただし、強いわけではないからシクシク泣いたりする。でも直ぐに前を向く。基本的に男もポップ。ダメ男なのにメルビンはモテモテ。一攫千金で大金入ったり、かと思えば破産したりを繰り返し、生活が全く安定しないのに悲惨なムードが全然ない。くすぶった男の大逆転も、離散した家族の再生もなく、静かに自分の人生を肯定して終わってしまう。何かを成し遂げなくても人生に美しい瞬間がいくつかあったなら、もうそれで充分じゃないか、と。「ハワード・ヒューズが俺の歌を歌ったんだぜ」

最高だったのは、カミさんがストリップで踊る時と素人参加型番組出てしょぼいタップ踊る時の2回とも「サティスファクション」流すとこ。あんなバカな使い方あるか。そんな場面なのにカメラがずーっと動いてて画は妙にカッコいい。どういうセンス!?
TaiRa

TaiRa