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メルビンとハワードのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

メルビンとハワード(1980年製作の映画)
4.5
先日、ジョナサン・デミが亡くなったってことで、日本未DVD化の「メルビンとハワード」を輸入して観ました。本作は、あの鬼才ポール・トーマス・アンダーソンがべた惚れした作品。長編デビュー作「ハードエイト」のインスパイア元として使用され、以後基本的に毎作オマージュを入れる程の愛されっぷりです。ポール・トーマス・アンダーソン好きのブンブンはMUST WATCH作とのことなので味わって観ました。


☆「メルビンとハワード」あらすじ
大富豪ハワード・ヒューズから相続人に指名されたメルビン・デュマーの体験談を映画化。冴えないトラック運転手のメルビンは、夜な夜な道で倒れている老人を見つける。病院に連れて行くことを拒むその訳あり老人を朝まで介抱し別れる。しかし、実はその老人、あの大富豪ハワード・ヒューズで...


☆ステキ過ぎる人情ドラマ
本作は、まるで「男はつらいよ」を思わせる厚い人情ドラマでありながらも、タク・フジモトの超絶技巧カメラワークがカッコイイ作品でありました。

おつむは弱いが優しい男がハワード・ヒューズを助けてから、10分近くトラックの中でストーリーが進行する。今となっては「人生タクシー」や「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」など車の中だけで映画の面白さを引き出す技術が確立させれきたが、当時としてはここまで長時間車の中だけで物語を進めるのはなかっただろう。そして、この冒頭10分のやり取りあってこその「メルビンとハワード」。まるでコントのような掛け合いに爆笑と心がほっこり温まる人情の厚さに感動を覚える。

主人公メルビンはおつむが弱いが人情厚い男。老人ハワードを元気づけようと、歌を歌うのだが、これが下手すぎる。ハワードも嫌がる。ジェネレーションギャップもあり会話がとことん噛み合わない。それでもメルビンは明るくハワードの心を癒やそうとする。なんていい男なんだと感動する。

そして、ハワードと別れたあと1時間ぐらいは、ずっとメルヴィンの冴えない生活が映し出される。しょうもなさすぎて笑えると共に、あまりにしょうもなさすぎて哀しくなってくる。

だからこそ、ハワード・ヒューズから相続人に指名されたときのメルビンに切なくなり心が締め付けられる。最後の最後までメルビンは良い奴だった。良い奴過ぎてかわいそうに思えた。

一見、通俗なコメディに見えて、映像作りで真似したくなるような構図が多い(というよりも、ポール・トーマス・アンダーソン映画の構図そのもの)。そして、通常だったら映画にすらならないようなメルビンとい一人の冴えない人生に観客は没入させられる。凄い!素晴らしい!大切にしたい一本でした!
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