ササキ・タカシ

ササキ・タカシの感想・レビュー

4.0
こんな面白いアニメーションが単館で、しかも1日1回午前中にしかやってないっていうのはどうなのだろうか。宣伝も特にしていないようで自分が見た回は土曜日だっていうのに客入りが半分くらいだった。見過ごすにはあまりにも惜しい傑作なのに。これは高畑勲と宮﨑駿が蒔いた種が40年後にフランスで花開いた、2010年代の『パンダコパンダ』ではないのか。僕のこんな拙いレビューを読むよりも先に予告編(https://youtu.be/NYAlqObkwOk)を見てほしい。この予告では字幕だけど、公開版では素晴らしい日本語吹替えがついていた。ああ、なんて日本語の柔らかなダイアログに似合う作風だろうか。

まず、高畑勲の近作のような水彩調の淡い色彩と、ラフでありナイーブな線のビジュアルに心を奪われる。全てのシーン、カット、1コマ1コマがまるで絵本の挿絵のよう美麗でありながら、線の一本一本が小さな生き物みたいにちょこまかと動きキャラクターの仕草を形作っていく。キャラが動いているのを見ているだけで楽しい、という、アニメとしては当たり前のようでいて近年の日本の作品(特にTVアニメ)ではなかなか味わえない感覚を新鮮に感じる。ビジュアルだけじゃない、お話だって気持ち良いのだ。ボンクラ中年男と家出少女が偶然に築いてしまった「許されない友情」という共犯関係を、どこまでも清々しく、コミカルに描き切っている。地下に住むネズミと地上に住むクマに二分された世界観の風刺性も面白く、前歯によって文明のシステムが作られたというネズミ世界の設定もSFチックで心が踊る。何より、セレスティーヌがエッチだ。中年男と家出少女が隠遁生活をするというネタ自体がちょっとインモラルなわけで、しかも社会不適合者とも言えるアーネストを受け入れ、頼り、家族として愛してくれるだなんて、まさに俺達のセレスティーヌ。勲もハヤオもアーネストみたいなボンクラキャラを絶対に主役にしたりはしないので、そこがジブリの諸作とは違うところですわな。なんて優しい世界なんだ。

アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネート、東京アニメアワードフィスティバル2014コンペティション部門優秀賞受賞作品。