アキラナウェイ

救命艇のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
3.8
アルフレッド・ヒッチコック監督による、戦時下の救命艇に乗り合わせた数名の男女による漂流を描いた密室劇。オープンエアだけど!!

第二次世界大戦下、イギリスに向かう客船がドイツ軍のUボートの攻撃を受け沈没してしまう。辛くも船から逃れた男女数名は、1隻の救命艇に乗り合わせるが、そこにはUボートの乗組員である1人のドイツ人が紛れ込んでいた—— 。

製作はアメリカ。
公開は1944年。
まだ終戦していないじゃないの!!
日本では劇場未公開。
逆に言えば、戦時下でこんな映画作って劇場で流せちゃうアメリカの余裕な。そら負けます。

およそ救命艇には不似合いな貴婦人が優雅に1人、海の上をぷかぷか漂う。

撃沈された客船の物資や死体が浮かぶ中、辛くも命を取り留めた乗組員が1人、また1人と救命艇に乗り込んできて…。

敵兵であるドイツ人がそこに紛れ込む事で、人間模様もさざなみから大波へと変遷する。

自分達を砲撃した敵兵を救うのか?
ただ1人航海に詳しい彼の言う事を信じるのか?

良心と疑心とに苛まれていく人間模様の描き方が実に上手くて惹き込まれる。

BGMは風の音や波の音。
派手さはなくても、戦時下の緊迫感を醸し出すのは演者達の演技そのもの。

およそ戦争中とは思えない程に着飾っていた貴婦人が、色々な物を失っていき、いずれ持たざる者へと変貌していく様が面白い。

嵐のシーンとか、当時のスタジオ撮影でどんな風に撮影したんだか。本当に海の中で嵐に遭った様に見えるんだから凄い。

ワンシチュエーションでの会話劇だけで、戦争の意義を問うのは流石のヒッチコック御大。

お馴染みヒッチコックのカメオ出演。
今回は…

そこ!?

当初は水死体案もあったとか。
海に漂うヒッチコックも見てみたかったかも。