ドント

救命艇のドントのレビュー・感想・評価

救命艇(1944年製作の映画)
3.8
44年。ヌワーすごかった。ナチスに撃沈された船から辛くも助かった男女9人(?)と、当のナチスの軍人が乗り合わせた救命艇の長い長い海上の遍歴と人間劇場。原作はなんとスタインベック。
元々狭い舞台の映画というのは好きなのだがこれもとてもよかった。大好きです。小さなボートの上でのみ行われる人類どもの揉め事と一瞬の交情、しかる後にまた揉め事の繰り返しなのだが、事件や事故をごく自然に配置しつつ、ボートの外に出ない神技のような撮影が見事で飽きさせない。
技巧は見事だが見事ゆえに、皮肉と悲劇がないまぜになった内容のせいで心がギスギスしまくる。意地悪な神(監督)の掌の上で乗員も観客も転がされ続ける。
どの人物も色濃く印象的だが、異様にタフなナチのおっさん(悪魔的だ)が強烈。そして黒人の扱い(扱われ)方に一種の凄みがある。
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