カトヤン

突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録のカトヤンのレビュー・感想・評価

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この映画はどこかで80年代の全映画No. 1と謳われていて、ずっと見たかった。そして実際怪作だった。

保険会社を経営するシュワブ一家。そこにひたすら夏休みイタズラを仕掛ける高校生二人組、O.Cとスティグス。
低所得者を搾取する一家に反骨精神を向ける主人公。周りを固めるギャグのような人間たち。まともな人間が1人として登場することがない。
イタズラを続ける理由が全く説明されないのが潔よい。

本当に「何もない」80年代の空気感にカリカチュアを思いつきで詰め込むだけ詰め込んだような薄っぺらい世界に、アルトマン節としか言えないカメラワークとデタラメな話の繋げ方。
壊れかけの映画というか、もう軽薄すぎて笑って見続けるより仕方なかった。
見ようによっては円熟した映画センスとボンクラ映画がハイブリッドに融合した作品といえなくはない。
監督曰く「ティーン向けの低俗映画が嫌いだったのでMGMのオファーに乗った。ティーン映画を料理できるとおもったから。」だそうで、ティーン映画をコケにするために撮ったともいえるが、それが仇になったのか実際数年間お蔵入りになってしまったらしい。

ただしこんな話なのに誕生日会でO.Cが一目惚れした女の子と踊るシーンは美しかった。
要所に溌剌としたショットが挟み込まれているのが憎い。これが一概に失敗作と切り捨てられない最大の魅力だろう。
デニスホッパーがヘリに乗って「地獄の黙示録」よろしく登場するクライマックスがこの映画を一番象徴しているといえ、アルトマン流のナンセンスの極みを見たような気がした。

アルトマンの黄金期は80年代であるという説に納得。
カトヤン

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