マティス

ルートヴィヒ 完全復元版のマティスのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
4.2
偶然か必然か

 コッポラ監督の「地獄の黙示録」にすごく影響を受けて、今考えると馬鹿なことをしていたのだが、「ワルキューレの騎行」を一時目覚まし代わりにしていたことがある。この曲を作曲したのがワーグナーだと知ったのは随分後のこと。このワーグナーのパトロンだったのがルートヴィヒ2世だ。

 彼は国王でありながら、国事、政治や国民の暮らしには全く関心を持たず、ただ美しいものだけを追い求めた。奇行でも知られているのだが、国民からは人気があったらしい。
 ワーグナーの求めるままに際限なくお金を注ぎ込むルートヴィヒ2世。二人があの時代にめぐり逢ったのは、偶然なのかそれとも必然だったのか。彼と出会わなかったらワーグナーは多くの作品を残せなかっただろうし、我々も聴くことはできなかった。それを考えると、出会うべくして出会ったのだとも思える。

 ルートヴィヒ2世を演じたヘルムート・バーガーは美しい男性だった。ルートヴィヒの狂気を良く表現していたと思う。彼はたまたまヴィスコンティのロケ地を訪れていて見出されたそうだ。これも必然だったのだろうか。

 必然と思えるような出会い。それを探すのではなくて、今ある出会いを、自分がそう思えるのかどうかが大事なのかも知れない、ちょっとそう思った。
マティス

マティス