レナ

ルートヴィヒ 完全復元版のレナのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
5.0
完全版で観れて良かった…。4時間あるけど全く苦じゃなくて、それだけ切実に訴える力がある。こんな映画体験を長いこと待っていた。

狂気に苛まれて破滅する、ルードヴィヒ二世を壮大なスケールで描いた歴史大作だが、ヘルムート・バーガーの顔がみるみる変わっていって恐ろしい。怪演。
(昨年末に見た「スカーフェイス」を少し連想した)
目に入るものどれを取っても、全てが豪華絢爛で調和を持っている。その美しさ、内的世界の理想と現実との不協和音そのものが、既に狂気的である。
オペラも演劇も室内装飾も取り込み正に総合芸術で、映像全体が訴えている。ぞくっとするシーンがありすぎて語りきれない!

ルードヴィヒの弟で同じく精神を病んでしまうオットー1世が、少し前に観た「早春」の人だったのだけど、その作品より後に今作があることに驚く。それは物語の舞台もそうだが、失われゆくもの を描こうとする精神がヴィスコンティあるからだと感じる。彼の描く、絶望し、敗北し、破滅する人間の姿がここまで心打つのは、監督自身に重なっているからだろうか。或いは、彼らが決して誇りを失わないからだろうか。
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