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帝都物語のHKのレビュー・感想・評価

帝都物語(1988年製作の映画)
4.0
荒俣宏原作の小説を「ウルトラマンシリーズ」「曼荼羅」「無常」などの実相寺昭雄が実写映画化。キャストは嶋田久作、石田純一、原田美枝子などなど

明治45年。実業家の渋沢栄一は国の叡智を集め、ある計画を企てていた。それは「東京改造計画」と言い、帝都東京を軍事的のみではなく、霊的にも守ろうというのだ。しかし、そんな帝都壊滅を虎視眈々と狙う一人の男がいた。その名を加藤と呼ぶ。果たして止められるのか…

実相寺昭雄監督の作品をこれで始めて見ましたが、光の反射の使い方やら、切り返しの使い方は1950年代に至るまでの古い映画をしっかりと踏襲しているような気がする。

クリーチャーの動きとかには当時最新鋭のVFXを投入することによってオールドテクニックと最新テクニックを和洋折衷的に取り入れているのも斬新ですね。

こういう古いものと新しいものを一緒にする際には明治から大正にかけてを舞台にするととても良くなりますね。この和風と洋風、オカルトと科学、古典的映画技法と最新技術、色んな意味での融合がこの映画では垣間見れる。

物語としては実際に存在した人物や出来事を中心として風水や陰陽道などのオカルト要素とスチームパンク的な様相も包みながら、オカルト作品としてとても盛り上がりのある内容に仕上がっている。

実相寺さんの作品を初めて見ましたが、物凄い素人的な考えですが、押井守さんみたいな雰囲気を感じました。カメラワークとかショットの撮り方とかは映画的でありながら、台詞に関しては途轍もなく説明的になってしまう…でもそういう所が却ってたまらないのかもしれない。

映画序盤の渋沢栄一を中心とした改造計画についての談義のシーンなんてあの白い模型と裏側がただの黒い背景という全然国会らしくない様相とか、寧ろ観念的すぎるような構図の作り方が溜まらないですね。

加藤を演じるのは嶋田久作。思えば「大誘拐」に出てましたね。物凄い印象的な顔面をお持ちで、あの映画でもどこか見た覚えがあるなと思ったら、そういやこの人だったと思いましたね。

そんな加藤が登場するシーンでは毎回必ず虹が出てくる。この虹の使い方もなんか斬新というかね。ガメラ対バルゴンのバルゴンが出す恐怖の対象としての虹の扱い方みたいでしたね。そこが素晴らしい。

関東大震災が起きるからくりが実は加藤が企てていたというのもある意味幻想的と言いますかね。所々の特撮の撮り方もガラスが落ちたりするところをリアル且つ効果的に描いているためそこがとても良かったですね。

人工的な背景を用いるのも実相寺特撮の特徴。この映画でも所々加藤が登場するシーンはとても独特な映像美で見せてくれる。原田美枝子の前に現れる際とかも特にね。

ただし、ちょっとばかり苦言を言うのであれば、やはり話がちょっと取っ散らかってるような気がする。それでいてそこまでみんな大活躍する様子はないし。話の顛末をあまり明確に言わないのは良いのですが、終盤の展開はもうちょっと盛り上がるようにやっても良かったかもしれない。

ですが、それを差し引いても、ショットの撮り方とか含めて実相寺映画を堪能することができたので見れて良かったと思います。やはりあの明治時代のセットの作り方はたまらないですね。浪漫もあるしそこが良かったと思いますね。

光の演出が凄かった印象も残ります。石田純一と原田美枝子がともに歩いていくショットが素晴らしい。あそこでどこか円谷特撮風味になるのも味がありますね。本当に見れて良かったです。
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