フラハティ

ポゼッションのフラハティのレビュー・感想・評価

ポゼッション(1981年製作の映画)
4.5
離別からの愛の行方。


ポーランドの鬼才アンジェイ・ズラウスキーを一躍有名にさせた本作。
長期の仕事から帰宅した夫を待ち受けているのは、不倫をした妻の姿。
少しずつ狂い始める歯車。
崩れていく家庭という安寧。

処女作と二作目で共演しているマウゴジャータ・ブラウネと離婚をしたズラウスキー。
女性が男性を裏切る。
不幸な子供がいる。
自伝的な映画とズラウスキー本人が語っている。

離婚した詳細などはわからないが、本作が自伝的であるなら、妻に裏切られた主人公がズラウスキー本人であり、浮気というものが愛すべき妻をまったく違う姿に変えてしまった悪によるもの、としたのは何となく納得してしまう。
つまり妻が浮気をしたのは悪のせいであるのだ。
狂っていく夫婦の姿とは他所に、変わることのない子供。
ラストまで観た印象としては、この離婚自体ズラウスキーは後悔しているように感じる。


本作は人間の表裏一体という描きから、善と悪や男と女というような対比の描きが多い。
複製される人物は、結局のところ一人の人間であることにはかわりない。
これは東西ドイツの分裂というのが示唆され、分裂を繰り返しながら一つとなったポーランドという悲しき国そのものでもある。


無駄にセンスのあるユーモアや、ぐるぐる回るカメラワークは圧巻。
今は無きベルリンの壁から覗くドイツ兵や、まるで狙っているかのように生命力のない風景。
演技の域を越えたイザベル・アジャーニの情緒不安定さは、まさに『ポゼッション(憑依)』しているかのよう。
意味不明に進んでいく物語。
ラストはまさに次の次元へ。

魂と肉体は、ズラウスキー作品に一貫している。
肉体は魂をいれる器である。
その魂の所在がこの地になかったとしたら、私は一体どこへ行けばいい?
この愛は離れていくことを知らない。
フラハティ

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