タケオ

ポゼッションのタケオのレビュー・感想・評価

ポゼッション(1981年製作の映画)
4.2
第92回アカデミー賞で監督賞を受賞したポン•ジュノもスピーチの際に引用していた「The most personal is the most creative(最も個人的なことこそが最もクリエイティブなことだ)」とはマーティン•スコセッシの言葉だが、それに照らし合わせれば本作ほど突き抜けて'クリエイティブ'な作品は他にないだろう。『クレイマー、クレイマー』(79年)や『マリッジ•ストーリー』(19年)が逆立ちしても敵わない'最恐最悪'の離婚を描いた本作だが、その根底にはあまりにも'パーソナル'な監督の感情が渦巻いている。祖国ポーランドから追放された'悲しみ'、離婚した前妻への'怒り'、妻の不倫相手への'憎しみ'といった監督自身の「私怨」がグッチャグチャに混ざり合った様は、正に「カオス」と呼ぶに相応しい。地下鉄で体液をぶちまけ発狂するイザベル•アジャーニや愛憎の末に誕生した怪物をそのまま登場させてしまうような大胆さは、どう見ても明らかに「やりすぎ」である。だが、監督の私怨が極まりすぎた結果「映画」として完全に破綻しているからこそ本作には、メガトン級の衝撃を鑑賞者に叩き込む程のパワーがある。どんな「ゲテモノ作品」だろうとそこに「魂」さえ込められていれば傑作たり得ることを、本作は証明してみせたのだ。
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