タケオ

悪魔のしたたり/ブラッドサッキング・フリークスのタケオのレビュー・感想・評価

4.3
 『悪魔のしたたり/ブラッド•サッキングフリークス』(74年)は、悪趣味スプラッター•ムービーの頂点として今なお映画史に燦然と輝く不朽の名作だ。何もかもがエクストリームな、正に悪趣味描写の桃源郷。『ソドムの市』(75年)や『ムカデ人間』シリーズ(09〜15年)とも通底する、悪趣味でしか辿り着くことのできない'凄み'が本作にはある。
 内容といえるものは大してないのだが、簡単にいえば本作は、「最高のグランギニョール」を目指すキチガイ2人の悪趣味残酷ショーを楽しむ作品だ。支配人ザルドゥ(シェイマス•オブライエン)と付き人の小人ラルフル(ルイス•デ•ジーザス)は、自分たちの舞台を酷評した批評家とバレリーナを誘拐し、次なる舞台への出演を強要する。舞台の裏では人身売買にも手を染めているザルドゥとラルフルは、監禁している奴隷たちへの拷問を誘拐した2人に見せつけていくのだが、その拷問の数々がとにかく下衆で残酷でえげつない。指や生首を切断し、歯を全部引っこ抜き、頭にストローを突き刺して脳味噌をジュージューと吸い尽くす。良識のある方々なら眉をひそめるであろう酸鼻を極めた描写が盛り沢山なのは確かだが、なんと監督のジョエル•M•リードはその全てをコメディとして描き出しているのだ。そこが一番恐ろしい、そして愛おしい。
 実際のところ『悪魔のしたたり/ブラッドサッキング•フリークス』は、よくできたコメディ映画である。「舞台」という名の小宇宙の中で悪行のかぎりを尽くすザルドゥとラルフルが終始とにかく楽しそうなため、何だか観ているこちらまでだんだん微笑ましくなってくるし、クライマックスで繰り広げられるグランギニョールの凄まじさを「コメディ」という文脈から切り離して語ることは不可能だ。上半身裸のおっぱい丸出しのバレリーナが、柱に縛りつけられた批評家に何度も何度も回し蹴りを喰らわして殺害する前代未聞のショーには、何もかもが突き抜けた先にある謎の感動すら宿っている。人間のモラルや良識をせせら笑う、あまりにも衝撃的なオチも必見だ。言葉の最悪の意味において「唯一無二」な魅力を持つ傑作である。
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