半兵衛

忠烈図の半兵衛のレビュー・感想・評価

忠烈図(1975年製作の映画)
3.8
これぞ香港アクション映画の真骨頂、全編にわたり工夫されたアクションと二転三転するドラマ展開に見終わってお腹いっぱいの気分に(プラス4Kで処理された流麗な映像の美しさが格調の高さをもたらす)。あと敵が和寇のためか日本刀をメイン武器にしているので拳法&中国剣VS拳法&日本刀というご馳走のような仕様になっていて、さらに手裏剣や弓矢、爆薬まで加わってそのテンションの高さにアドレナリン全開になり気分がハイになってくる。日本刀の使い方もそれなりにちゃんとしているし。キン・フーのサービス精神がこれでもかと爆発しているのが痛快な面白さを引き出している。

主人公たち和寇討伐グループ(七人!)は最初からメンツが固定されていて『七人の侍』や『十三人の刺客』などメンバーが次々と加わるRPGのような醍醐味は無いけれど、その分を物語に使うまどろっこしさがないので序盤からアクションに次ぐアクションが楽しめる。ただ七人のキャラクターがあまり深く描かれないので、三人くらいは記憶に残らず「誰だっけ?」状態のまま映画が終了することに注意。そのなかでろくに台詞もないのにインパクトを残すのが実質的な主人公『一陣之風』ウー(チームの参謀役にして武道の達人という美味しい役どころ)の奥さん、ターバンなどインド系の服を着こなし(モデルは孔明夫人?)弓矢や格闘も男勝りにこなすクールな美人ぶりは他の女性キャラが出てこないのもあって際立つ。

敵の和寇グループもそれなりに個性が描かれているので強敵としての存在感を発揮する、日本の笠を被って襲撃する手下たち、坂本龍馬や宮本武蔵などを意識したかのような格好の幹部など他の映画にはないビジュアルもかなりのインパクト。でも一番記憶に残るのがボス・博多津を演じるサモ・ハン、白塗りの顔(ドラゴンボールに出てきそう)に新撰組のような衣装は舞台設定となる戦国時代の人間には見えず思わず苦笑しそうになった。

主人公たちと和寇が激戦を繰り広げるラストも巧妙なカット割(主人公のウーが猛スピードで戦うシーンは本当に分身しているのかと思ってしまうほど素早く描かれる)と、創意工夫されたアクションで気分がマックスに。ボスの倒し方は一風変わっているけどね、まさか石という原始的な武器が使われるとは…。

物語はアクションを優先しているためかちょっと雑な印象に、物語の肝である裏切り者は勘のいい人ならばすぐにわかるし、その裏切り者は途中から説明もなく物語からこつぜんと消えてしまう。あと将軍は本当に無能だったのか、彼の行動も伏線だと思っていたのに。それと中盤ウー夫妻が和寇のいる島を訪れて道場で敵と立ち会うシーンが異様に長いのは何の意味があったのか理解できない、まあ工夫されたアクションの数々は堪能できたので鑑賞時はさして気にはしなかったけど。

ユン・ピョウやジャッキー・チェン(スパルタンXの三人が揃い踏み)が端役で出ているようだけれど確認できず。それよりも個人的には海賊の道場にあった日本人の名札に「梅宮辰夫」や「室田日出男」、「神田隆」の名前があったことに驚き、日本映画ファンのスタッフのお遊びだろうか。あとサモ・ハンの刀やとんぼ返りを駆使したアクションには若山富三郎の影響を感じずにはいられなかった。
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