めしいらず

田舎司祭の日記のめしいらずのレビュー・感想・評価

田舎司祭の日記(1950年製作の映画)
3.4
初めて赴任した教区の村で、村人の為だと信じて彼らの私生活やいざこざに積極的に口出しし疎まれていく若き司祭。彼が日記に胸の内を吐露するモノローグによって物語られる。村人は品行方正とは言い難いけれど、司祭とて他人からの意見には耳を貸そうとしないのだから、独善的な点ではどちらも同じと言えるだろう。司祭は理想に燃えるあまり村社会に特有の排他的な反応に晒され傷んでいく。元より病弱な上に聖職者としての自身を問い、疑い、苦悩を抱え込んでやつれ果てていく。それでも医師や上司の忠告を無視して禁欲的な生活を続けてしまう痛ましい頑なさ。司祭の懸命の導きによって救済を得たたった一人の夫人は翌日に死に彼の立場を尚悪くする。まだ若い彼には人の心が計りかねた。人を導くには意志も身体もひ弱過ぎた。そして自身のあり方を迷い続けたまま村を後にする。
ブレッソンの出世作。あのタルコフスキーをして「史上最高の映画監督」と言わしめ(彼の著書に度々その名を挙げては褒めちぎっている)オールタイムベストワンに本作を挙げたほどであるのに、昨年まで一度も劇場公開されて来ず、数少ないテレビ放映によってその存在を知られた幻の作品(昔WOWOWが放映してくれた時には狂喜したもの)。ブレッソンの特異な映画(曰く”シネマトグラフ”)作法が確立したのは本作からであるらしい。ただ個人的にはこの聖性が十分に理解できたとは言い難い。また彼の映画にしては劇伴が少しばかり感情的で五月蝿く感じないでもない。
再鑑賞。
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