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鏡の中の女のpikaのレビュー・感想・評価

鏡の中の女(1975年製作の映画)
4.0
3時間のテレビドラマを短縮再編して世界各国で劇場公開した2時間バージョンを鑑賞。

作品の魅力を一人で体現しているようなリヴ・ウルマンの凄まじい演技は超圧巻!!
彼女の演技を一つ残らずカメラに映さんばかりに追い続け、緊迫感は止むことがない!
彼女の夢世界に入り精神の崩壊を共に体感し、虚構の他人事だということを超えて観客自身の孤独と恐怖心を刺激し、煽り、自分のことなのではないかと錯覚すら覚えさせまいと映画そのものに没入させるベルイマンの演出力に痺れる。
長回しのシーン全てが超強烈で、撮影監督なんて普段は特に気にしない無頓着な人間にもニクヴィストだとわかってしまうくらいカメラの存在感が出まくりで技術的にも見応えたっぷり。
舞台演出を超絶テクでカメラに収めたような部屋の壁で画面を分割した長回しや、意図的なクローズアップの多様、人物を追うパンニングなど、対象に感情を生ませるカメラワークと演出はさすがの秀逸さ。
必要性を持ったクローズアップの緊迫感はこんなにも極上なものなのだと改めて感じた。

片乳出した虚ろな少女のショットから始まる不穏な物語は、説明らしい説明はなく人物の日常が非日常へとズレていく様子を切り取るだけの不親切極まりない「いつもの」難解さなんだけれども、何の話かなぁと見ていると、老い先短い老人が朝方徘徊し「年は取りたくない」と泣き崩れる姿を目の当たりにした主人公が、夫も娘もいない合間に孤独を自覚し、老いへの恐怖と純粋な人間関係を築くことの難しさに気づき、ジワリジワリと自分の人生に慄いていくもので、不安に支配された人間は既になき物に取り憑かれ、無意識のうちに同じことを繰り返してしまうという人間の業が突き刺さる。
老婆が突然現れる演出なんかは黒沢清的でゾッとするし、(特に電話している最中の演出はハンパじゃない!)老いによる孤独の自覚から、心の奥底に押し込んでいた幼少期のトラウマや恐怖による罪の意識が思い出され生と死の天秤が崩れていく展開は冷や汗ダラリと本当に恐ろしい。

スウェーデンのテレビドラマだからスウェーデン語なはずなんだけど借りてきたVHSが英語吹替っぽくて気になって集中力が若干散漫に。声は似てるけどリップシンクはズレてる感じだし、短縮版だから英語吹替バージョンが日本に入ってきたのかな?
外国語に吹替られてるのを日本語字幕で見る違和感は普通の吹替や字幕鑑賞の倍は違和感あった。
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