タカシサトウ

鏡の中の女のタカシサトウのレビュー・感想・評価

鏡の中の女(1975年製作の映画)
3.5
[トラウマの再燃]

 精神療法医エニー(リヴ・ウルマン)が、患者と会ううちに自分の葛藤や過去のトラウマが次第に明らかになり、出会った医師トーマ(エルランド・ヨセフソン)の助けも借りながら、その葛藤やトラウマを語ることでようやく向き合っていく。

 両親の事故死や、育ての祖母に閉じ込められること等、小さい子供には耐えがたい出来事が起こり、さすがにこれだけのことが起こり、そのトラウマが再燃するなら、人格には相当な痛手である。発作的とはいえ、自殺未遂もあり得るかもしれない。この場面には毎回ドキドキする。

 それが、患者のトラウマと向き合ったことにより、自分自身のトラウマが再燃するが、患者の事がほとんど描写されない為に、なぜこの時期に再燃したのかの説得力に欠ける。

 また、エニーのリブ・ウルマンの独白が中心で、過剰であり、少し長過ぎて観ているこちらは疲れてしまい、ウトウトしてしまった。しかし、リブ・ウルマンの息苦しい程の上手さと、受けのエルランド・ヨセフソンもイングマール・ベルイマン作品では常連で、慣れたもので何とか最後まで行けた感じだ。 (2018.10.7)

 精神科医というのは、エニーにトラウマの解消が必要であるという象徴的な意味もあるのだろう。

 自殺まで図るほどの心の傷を、あの告白が痛ましく凄まじいとはいえ、あれで軽くなったのはちょっと出来過ぎのようなのが残念ではあるが。

 イングマール・ベルイマンが牧師である父親に、罰として暗い衣裳部屋に閉じ込められたことが、この話に影響している。また、結婚と離婚を繰り返したベルイマンの安定しない夫婦関係も、エニーと夫やトーマ(エルランド・ヨセフソン)との絡みに反映していると思う(2021.1.24)。