イチロヲ

マルキのイチロヲのレビュー・感想・評価

マルキ(1989年製作の映画)
4.5
身に覚えがない強姦罪により服役を余儀なくされたサド侯爵が、権力者の奇行を横目にしながら、執筆活動に邁進していく。「ファンタスティック・プラネット」のデザイナーが脚本と美術を手掛けている、エロティック・コメディ。

フランス革命前夜のパリを舞台にして、バスティーユ獄中のサド侯爵とその周辺の人間模様を、艶笑滑稽譚のように描いていく。全編にエロティック・アートが炸裂しており、演者たちが特殊造形による動物の被り物をつけて芝居している。

社会的地位・宗教的観念とは無関係の性的快楽を探求するという、サド侯爵の悟りきった人間性が魅力満点。コランと名付けられた自分のペニスと問答するところが白眉となっており、サドが自我、コランが本能、というふうに解釈することができる。

ほとんどの権力者が、サド侯爵の影響を密かに受けており、上流階級の下半身劇場を展開させていく。「所詮、人間の営みなんて、こんなものだよね」と言わんばかりに、滑稽の対象へと落とし込んでいくスタイルが、あまりにも面白い。
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