「仁義なき戦い」もそうであるが、深作欣二のやくざ映画はなんというかすごく変わっている。他のやくざ映画はあんまり観たことがないので偉そうなことは言えないが、ものすごく最低で恐ろしいのにどこか魅力的なのだ。
おそらくこれらは俳優陣の力が大きい。監督自体はやくざというものを非常にリアルに描いており、かっこ悪くて最低でしょうもないやくざを描いている。だが、そんな映画に出ている俳優陣は最高にかっこいい魅力的な役者ばかりなのだ。特に主演の渡哲也の演技のキレは凄まじい。本能のままに行動しており男らしいのかと思えば、"死"に対して人並みの恐怖を覚えたりと、言わばとても人間臭いのだ。そういう男が落ちるとこまで落ちていく様は人を惹きつけるものがあるだろう。
しかしいいところばかりでもない。良くも悪くもとても淡々としているのだ。確かに所々に盛り上がりはあるのだが、やや主人公の行動を追っていくのがメインとなってしまっている。そしてそれが延々と続くので、後半はかなり間延びした印象を受けた。ただでさえ訳がわからん主人公なのにさらに訳がわからなくなってくる。まぁそれも一つのこの映画の魅力なのだが…