ぼのご

イカリエ-XB1のぼのごのネタバレレビュー・内容・結末

イカリエ-XB1(1963年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

生命探査で地球から旅立つ飛行船。
カメラワークと構図が丁寧。電子音を使った音楽が印象に残る。皆で踊っている場面や運動広場で身体を動かしている場面は、なんか中毒性あって繰り返し観ちゃった。

冒頭から不穏で、ゴシック小説のような壊れていく現実の恐ろしさがあった。『惑星ソラリス』と同じ原作者なんですね。ソラリス同様、端々に人の意識を感じる。

でも作品の雰囲気とは裏腹に、基本的にイカリエの殆どの乗組員は楽観的。未知の危機にさらされている時でもほぼ全員が希望を抱き無事を信じていて、危機感を持っているのは年長者と思われる数学者と地球に妻子を残していて絶対に帰らなければならない理由がある副艦長くらい。武器の携帯もしていなくて、壁に飾ってあったの以外見かけないし、トチ狂った際にも人間には決して銃を向けない。
舞台の22世紀後半はきっと平和な時代なんだろうなぁ。限られた空間で同じメンバーと長い間共に居る閉塞感や苛立ちもあって、トゲトゲしい物言いをした人も居たけどすぐ謝るし、言われた相手は言い返さないでしょんぼりするだけ。可哀想だけど可愛かった笑
恋敵が居ても喧嘩にならないし、他の乗組員の恋愛も茶化さず遠目に見守る確固たる倫理観。

途中で宇宙船らしき物を見つけた際、偵察でロボットを送ろうという案もあったけど、相手が中に居たら失礼ということで乗組員二人が直接出向く。平和ボケとも言えるしそのせいで危ない目に遭ったりもするんだけど、人間はこうあってほしいと思うような正しさも感じた。
遭遇した宇宙船は20世紀後半の地球人の物で、乗組員はかなり利己的な理由で全滅していた。核爆弾も積んでいて、それに対する艦長の怒りが印象的。心底嫌悪感を抱いているようだった。

色々不安もあったけど、最期は宇宙船で赤ちゃんが産まれたタイミングで希望と一緒に終わるのが温かくて好き。
発想が冴え渡っているし、その後の多くの作品に影響したというのも納得いく。約60年前の作品だから、いま観ると宇宙船やロボットの造形なんかは流石に可愛らしかった。あと歩くたびにピカピカ光る靴! そういえば子どもの頃ああいう靴好きで履いてたなあ笑
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