こうん

イカリエ-XB1のこうんのレビュー・感想・評価

イカリエ-XB1(1963年製作の映画)
4.2
55年前の社会主義チェコ産のモノクロSF映画でしかもレム原作。
それを週末の疲れた体を引きずってのレイトショー鑑賞、しかも俺史上初のアルコール添え(角ハイボール缶)。
絶対寝る!…と思ってましたけど、まなこ全開で埋もれていた傑作SFを堪能致しました。
角ハイも美味かったし。

オハナシは2163年生命探査の旅に出たイカリエXB1のクルーの皆様がいろいろの未知との遭遇をする、っちゅうSFサスペンス。
スタートレックや2001年の着想のもとになった…みたいな喧伝がされていてそれはそうなんでしょうけど、僕はこの映画にみなぎる「本格SF映画作る!」という気合のほとばしりを感じてうれしかったですかね。
間違いなく、隅から隅まで「2163年のテクノロジーや文化や風習や精神性はこうに違いない」という確信的な想像に基づいて作られていて、一箇所たりとも弛緩した部分がなかった。
製作から55年後の今から見ればそれらはユーモラスではあるかも知れないけど、その確信に満ちた感じの想像(そして創造)が、この映画を屹立した存在へと高めているのだと思う。
たぶん若き日のジョン・カーペンターやダン・オバノンもこの映画を観ているのではないかと思う。
「エイリアン」に通じる部分がずいぶんあったし、このローテクしかない中で描かれる(しかし説得力のある)SF描写は、貧しいオタク映画青年に確実に感銘を与えたと思う。

そういうジャンル映画としてのSFの魅力に加えて、レム原作に拠るところも多いと思われるイデオロギーやフィロソフィカルな奥行きのあるプロットや描写が、失われた正しい“Sci-Fi映画”としての佇まいが素晴らしいし、ミニマムで世俗的な宇宙船の中で人々が対峙する深遠で不可解で無限の可能性を秘めた宇宙世界の対比がアンビバレントな知的興奮を与えてくれ、この映画をスクリーンで観られる僥倖に感謝するしかないと思いました。

あのなんとも言えん味わいの電子音楽を浴びるように聞ける映画館環境で観るのがマストと思いますよ!