むっしゅたいやき

影の列車のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

影の列車(1997年製作の映画)
5.0
紛れもない傑作です。
副題は『ル・トュイの亡霊』。
映像表現のひとつの極地。

架空の弁護士・フルーリの家族を映したシネマトグラフ。
その修正フィルムが冒頭から流れるのですが、モノクロームのフィルムからカラーの現代パートへの唐突かつスムーズな切り替わりに参りました。

現代のル・トュイの街の様子はまるで実際に散策しているかの様に映し出されますが、途中で視聴者は気付く筈です。
『あれ?どこかで見た事があるぞ』と。

現代パートに入ってからは、無伴奏、かつ会話も無く、聞こえるのは車の音、木々のざわめき、時計の秒針の音といった環境音のみ。

後半はフルーリ一家の亡霊達が、シネマトグラフに映った行動を再現しますが、その際にフルーリ一家とメイドの関係性も推察されます。
初めて映像のみで物語を語られる経験をしました。

叙述は冒頭のみ、劇伴もラヴェル、ドビュッシー、バルトーク、チャイコ、シェーンベルク等の各々ワンフレーズのみで、鑑賞者に視覚からの連想を促すタイプの劇映画ですが、鑑賞中から『未だ終わらないで欲しい』と思わせられました。
監督曰く、『実験的映画』だそうですが、私にはとても心地好く、また楽しい連想体験でした。
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