ねこ無双

影の列車のねこ無双のレビュー・感想・評価

影の列車(1997年製作の映画)
4.0
シルビアのいる街でのホセ・ルイス・ゲリン監督作。
30年代に謎の死を遂げた男が撮っていた無声の家族ムービー。映画スタッフが損傷箇所を再構築したその映像から映画は始まります。その映像は断片的でありながら、大家族の日常を写している。

場面は変わり、現代の牧歌的な人々の生活を映し出し、家族ムービーの舞台となった館へカメラの視点は流れてゆく。
そして、館は雷鳴と雨に包まれた幻想的な世界へ変わってゆく。
壁に映る木々の影と古びた家族写真。
何度も何度も偏執的に巻き戻され、一時停止しながら再生されるフィルムに垣間見える感情。ちょっとここ怖いから私は夜中に観たくない…。
細切れで紡がれたミステリーを見てるような気分でもありました。
セリフは全く無く、冒頭の説明だけなので、きっと字幕が無くてもいけます。
実験的な作風とか、難しげな事はわかりませんが、感覚的に観ていて好きなタイプの映画でした。

これは監督がシネマトグラフ100年目を迎えるにあたり、映画へのオマージュとして作った作品。光と影と音という映画の要素だけで表現した映画を撮りたかったと語ってます。
故人(古いハリウッドスターなども含め)が映画の中では生きているのを観るって確かに不思議な体験。
小津監督に影響を受けたという監督談話を見ると映画への印象がまた変わります。