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砂漠のシモンのkurageのレビュー・感想・評価

砂漠のシモン(1965年製作の映画)
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メキシコ映画というキーワードに惹かれて観てみたら、ルイス・ブニュエル作品と後から知る。モノクロ映像から膨らんでいく砂漠の色の世界に、のっけから目が釘付けに。あっという間の43分だった。

6年6週6日間、柱修行を行うシモンが悪魔に誘惑されて堕ちるまでの話のようにも見えるが、堕ちてからが本当の修行で、シモンの人生のこれからを示唆。意外と神の思し召しで地上に降りたんじゃないか、と思えたりして。堕ちていく先がNYのライブハウス(ダンスホール)?というのもナイス。

キリスト教世界へのアイロニーとも取れる内容で、当時のメキシコでそれを作品化するのはかなり挑戦的なことだったのではないかと想像した。

何事も文脈で観ないときは先入観がないので「発見」の楽しさがある。悪魔の女の羊蹴っ飛ばし、アリの巣隠し、小男とヤギの乳、若い神父のスキップなど何気ないながらも鮮烈なシーンが重ねられ、意味がわからないながらも強い印象が残った。後から巨匠ルイス・ブニュエル作品とわかり、なるほど納得。
(文脈で観て、その文脈の世界観を味わい尽くすのもまた面白き)

この作品を観て、ふと、点数をつけるのをやめてみようと思った。そもそも点数に対する明確な基準はなく、これが面白い!と思う自分のものの見方も日々更新されていくので過去につけた点数も変化するものだなあと思ったりして。

ブニュエル作品をもうちょっと観たいような、沼にハマりそうな。危険。
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