宇京

愛のはじまりの宇京のレビュー・感想・評価

愛のはじまり(2002年製作の映画)
4.6
「海にいく車両」だけを頼りに座席で目をつむる、職を求めていると各所で伝えながらも、尋ねられるたびに名を偽る、へいぜんと盗みをする、そういう女性が観光地の海辺で人々の注目を集めながら誰のためにでもなく踊る場面がとても感動的で、もちろん彼女の名前を知るひとは誰もいないのだ、感動しているとまだ映画がはじまって体感10分もたっていないことに驚いた。
男が一応複数人あらわれて女がひとりなのだから、彼女はかわるがわる彼らといろんなやりかたで踊ることになる。誰かと踊るってのはけっきょく愛に関する物語だ、ドラマだ、それぞれの絶望だとか困難をしらじらしいものにしたてあげてしまう。そういう踊りは疲れちゃう。
彼女の困難はなくならないし、むしろ電話や銃口や無言や知らないふりを突きつけられるたびに彼女は静止してしまう。逃げてみても行き場がなくなって倒れて土埃にまみれるだけ。向きあっても逃げてもダメならどう生きればいいの。
けれど踊りたがらない男がいた。彼が彼女を誘う。さそうというよりはいざなう。ついでに踊りというよりはただ揺れているだけの時間が、夜から朝まで、微笑みから笑顔まで、服装もいつまにかかわってる、そういう時間が映しだされるのをみて、ああ物語ではない愛がはじまるんだなとおもって感動した。ふたりは互いの名前を呼びあったりなんかしないね。
あと、センスあるのかないのかよくわかんないところがわりとあって、たぶんセンスない、でもなぜだか誠実さを感じてよかった。こういう映画も好きだな
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