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グッバイ20世紀のhorahukiのレビュー・感想・評価

グッバイ20世紀(1999年製作の映画)
4.0
21世紀に道徳なんて無い!

勝手にクリスマスホラー②
ジャケの激おこサンタがド派手に殺しに来るのかと思いきや、一言では全く説明できない超怪作!VHSにはブニュエルとかフェリーニとか喩えられていて、そこにホドロフスキーも混ぜたような感じ。多分初めてマケドニアのホラー映画を見たけど凄すぎる!🤣

何が凄いって、監督・脚本・出演が「〇〇フスキ」しかいない!しかもひとりだけ「フスキー」と伸ばし棒入ってるのも何か好き😂フィルマで見る限り他の方より圧倒的に映画に出てるし、「俺はお前らと違うぞ!」みたいな意地とプライドがいつの間にか伸ばし棒として現れてくるのかな🤔

本作は三部構成で、2019年→1919年(約3分のみ)→1999年(作中の現代)と見せていく感じ。2019年は『マッドマックス』な荒廃した世界。黒のローブを纏った儀式的な集団が、絶対に死なない主人公をなんとか処刑しようと銃を撃ちまくるお話。1919年はサイレント映画みたいな感じで、近親相姦カップルが家族に祝われ、殺され、ハッピー♫ってお話。1999年にやっと殺人サンタが登場。お通夜中にコカインでラリったブルジョワ的な人々がサンタを殴り殺そうとする→サンタ大暴れ。

正直サッパリ何してるのかわからないのだけど、VHSの記載によると、いつ始まるかわからない紛争への危機に晒され続けた中で生まれた作品らしい。そういった第一次対戦後のサイレント期ホラーのような役割をマケドニアにおいて担っていたと考えると凄く納得の行く内容で、全ての時代に登場する予言者の「過去もクソだし未来もクソ」という言葉のように、過去の罪が現在、未来と引き継がれ、同様なことが延々と繰り返されるだけだという現実を三時代に渡って描いているように思えてくる。

それを物凄くシュールなコメディに乗せているのが独特な空気感を生み出していて、それこそブルジョワを嘲笑うブニュエルや『climax』の時のノエのような視点でもって人間の愚かさ・滑稽さをとことんまでに植え付ける。「こんなアホな理由で皆んな人殺したり戦争したりしてんだよ?こんなしょーもない理由だからいつでもすぐに戦争になるよ?」って感じで。そしてその事実を愚かな歴史として未来へと受け継ぐ役割を殺人鬼サンタが担っていて、その歴史そのものが死ねない主人公にバトンとして託されるという歪ながらも綺麗な構造。

カメラが水平になることが体感的に異様に少なく、斜角に仰角に次々に変化させ動きまくる、まるで安定することを拒むような映像が楽しくて、それが主題とも合致しているのが的確だなって思った。手前と奥に配置した客体を上下含めて入れ替えていく振り向きの反復や、虚無的構図、照明光→闇への変遷等々かなり凝って作られてるのがわかる。そんで、ホドロフスキーみのある儀式的な衣装デザインも素晴らしく、両手に顔つけたシスターみたいな人が2人並んでお辞儀するのが6人いるみたいに見えるとことかサイコーだった!

「金をやるから未来を占わせろ」とかいう珍しいとタイプの占い師さんが『マッドマックス』な世界をチャリで疾走してたのだけど、『ターボキッド』とか『プリズナーズオブゴーストランド』の元ネタ?あと大晦日ホラーでもあった😂
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