HarryT

ヒトラーの審判 アイヒマン、最期の告白のHarryTのレビュー・感想・評価

3.7
ナチスドイツは、国家の目標に国民全員で向かう、つまり、個人の権利は国家のためならば抑圧するというファシズムと、アーリア人種の優位性を元にした反ユダヤ人種政策の二つの柱から成り立っている。その二つが互いに助け合いつつ加速し、加熱して、国を破壊し、普通に考えるとありえない悲劇を数え切れないほど引き起こしてしまった。

アイヒマン がこの映画で責められているのは、反ユダヤ政策への加担であり、彼の弁明は、自分は、ファシズムの一つの歯車に過ぎないということだと思う。
この映画自体はよくできていると思う。
ただ、私が残念なのは、イスラエルという被害者の国の話なので、仕方がないのかもしれないが、ファシズム自体への批判という視点が欠けていることである。アイヒマン は、ユダヤ人の殺戮に関与していなければ、罪がないのか?

今の状況で反ユダヤ、人種差別政策が支持を得ることは、想像しにくいが、個人より国家を優先するということは、実は容易に生じうる。

この映画を観ての感想としては変かもしれないが、改めて、こんなことを思った。
HarryT

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