たった12分されど12分…。
見事に起承転結がおさまり、日常に潜むドラマにドキドキさせられる見ごたえたっぷりの作品だった。
これがアッバス・キアロスタミの初監督作品だというから、やはり彼はすごい…。
少年の学校の帰り道に犬がいる。なんとかその犬がいるところを通らずに帰りたい…でもどうしても通らないと家に帰れない。
偶然通りかかった大人の背後について行くなど、なんとか吠える犬を避けようと模索する少年がかわいい。
あくびが出たり、鼻をかいたりと呑気そうに見える少年だが、彼の眉間にしわは寄っている。
音楽が最初から最後まで効果的に用いられている。緊張感やら高揚感やらが、少年の表情や動きだけでなく、音楽によってコミカルに演出されている。
ラストの静止したショットには驚かされ、次への可能性を感じさせるワクワク感もあった。
ほんのり哀愁を感じることも、クスッと笑ってしまうこともある。およそ10分でこの満足感は嬉しい。