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THX-1138のYOUのレビュー・感想・評価

THX-1138(1971年製作の映画)
3.2
ジョージ・ルーカスが監督・原案・脚本を務めた、1971年公開のSFサスペンス。
当時日本では劇場未公開作品だった本作は、1969年にフランシス・フォード・コッポラと共同で設立した製作会社アメリカン・ゾエトロープで同社の第1作かつルーカスの監督デビュー作として制作された作品とのこと。名前も個性も持たない人間たちがコンピューターで管理・統制された未来社会、セットから演出まで全てが無機質過多な不穏さ、設定やデザインから受け取れる当時の未来像、そして何より現実の社会とも多分にシンクロする物語の寓話性と、ディストピア映画を観る上での楽しみな要素を86分の尺に惜しみなく詰め込んだような一作で、確かに私が事前に求めていたものは全て備わっているかもしれません。ただ期待値が高過ぎたのか、最後までイマイチ乗り切れなかったんですよね。何なんでしょうか、先程のように要素だけを切り抜くとめちゃくちゃ面白いものを観たような感じもするのですが、これ程「乗り切れなかった」という感想がバチッとハマる作品もそうそう無いと言いますか、本当にただただ86分が過ぎて行ったような感覚でした。時々こういうアート的な作品を観ると、自分がいかに「凡人」なのかをつくづく実感します。うーん、なんか感想もあんまり出てこねぇわ。

低予算のインディー作品にも関わらずあそこまで巨大なスケール感を打ち出せていたり、場面ごとの緩急のリズム、空間の効果的な見せ方などなど、本作が秘めた数々の革新性や後の『スター・ウォーズ』にも受け継がれていくルーカスのクリエイティビティはもの凄く感じ取れました。また斬新過ぎる本作の終わり方も、あのざく切り感がかえって物語の提示する不穏さをより際立たせているようで好きですね。こうして書いているとめちゃくちゃ好きだったような気もしてきたなぁ。「乗れなかった映画」はこれまでにも沢山あるんですけど、本作はとにかく「乗り切れなかった映画」なんですよね。つまり乗れてはいるんですけどそれが持続しなかったと言いましょうか。その大きな要因は何と言っても「ルーカス本人による大幅な差し替え」でしょうね。ルーカスが病的なまでの「再編集したがりさん」だという事は「スター・ウォーズ」シリーズでの諸問題からも存じ上げていましたが、それでも今回のそれは明らかに不自然過ぎますよ。「スター・ウォーズ」はオリジナル自体がもの凄く壮大な世界観を創造出来ているからこそまだ「再編集」というニュアンスに留まっているように思いますが、今回に関しては元々がインディー作品であるが故にCGとの折衷があまりにも不自然で「再編集」というよりも「差し替え」感が強く、それが挟み込まれる度に冷めてしまい結果的には「乗り切れなかった」という感想に落ち着いてしまいます。ただやはり好きなシーンももの凄くある作品ですし、何よりめちゃくちゃ短いのでこれらのモヤモヤを覚悟した上でもう一度観直そうかと思います。





































































































































































ほとんど同じ話でも、これなら「何だよこれちゃっちいなぁ」とか言いながらも最後まで観てしまう『2300年未来への旅』の方が自分的にはやはり一段勝る。あの(僕の好きな)安っぽい銀ピカロボットをCGに差し替えられた日にはもう激昂。
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