純

ケルジェネツの戦いの純のレビュー・感想・評価

ケルジェネツの戦い(1971年製作の映画)
3.7
戦争に行く男たち。悲しみにくれる女たち。中世のフレスコ画をアニメーション化することで描かれる世界観が、今観ても斬新だった。

どの作品もだけど、動く静止画という印象がある。綿密に重なり合わされた切り絵が監督の手によって命を授けられ、躍動感を伴って生き始めるという感じ。戦争の激しさ、容赦のなさ、救われなさが凝縮されていて、描いているものはやはり暗く重い。戦争という悪を表現するのに、精密で美しいフレスコ画を使うという手法が反則でしかない。美しすぎる。また、この作品でも音楽がぴったりと作品に合っていて、1本目に比べて戦争で命を失うこと、大事なひとに残されて生きることの「哀しみ」の要素が強く表れていたと思う。

戦争後の村の復興の様子はリズム良く明るい色彩で描かれているけど、戦争の描写との明らかな対比が、過去をなかったことのようにしているかのような虚しさを感じさせた。言ってしまえばあまりに高い芸術性によって異様で不思議な雰囲気のある映画だけど、何か怖くて何か哀しい。そういう生き方しかできなかった当時の人々、彼らが生きてきた歴史への深い思いを感じる作品だった。
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