イチロヲ

ジプシーのときのイチロヲのレビュー・感想・評価

ジプシーのとき(1989年製作の映画)
4.0
不思議な超能力を祖母から引き継いだジプシーの青年が、出稼ぎグループの口車に乗せられた挙げ句、イタリアのギャング団に加担してしまう。ユーゴスラビアに居住する本物のジプシーが総出演している、ヒューマン・ドラマ。

本作の主人公は、空き缶を少しだけ動かせられる程度の超能力をもっている人間として登場。物事を論理的に考えるようになる以前の、「神秘と共存していたとき」の名残なのだが、新しい刺激を欲する主人公は、自身の神秘力を放棄する行動に出てしまう。

ジプシーの生活風景を虚飾なしに描いているため、映像から得られる情報量にひたすら圧倒される。主人公を口説き落とすジプシー・ギャングにも、そうなってしまった事情が描かれており、絶対悪という存在がいないところも醍醐味となる。

人間の尊厳と根源をドラマ内で提示しつつ、鑑賞者の感性の赴くままに訴えかけてくる作品。「民族の伝統を守り続けること」について、考えさせられる。
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