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もののけ姫のTSのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
3.9
【人間と自然の対立】82点
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監督:宮崎駿
製作国:日本
ジャンル:アニメ
収録時間:135分
興行収入:約193億円
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1998年日本アカデミー賞最優秀賞作品
恥ずかしながら見たことありませんでした。というかジブリ作品、見ていない作品が結構あります。『風の谷のナウシカ』や『風立ちぬ』もそうでして、また見ていきたいと思ってます。世界を震撼させた驚愕のアニメーション。宮崎駿監督作品最高峰と名高い今作は、確かに凄まじいものでありました。

中世の日本。エミシの村に住む青年アシタカはタタリ神という化物を退治するが、片腕に呪いをかけられてしまう。アシタカは呪いを絶つために西へと向かっていくのだが。。

僕がここで述べるには烏滸がましすぎる程、よく出来た作品だと思います。今までのジブリ作品は自然保護を訴えた作品が多かったと見受けられますが、本作は自然破壊を徹底的に描写することにより、自然と人間の共存について強く訴えている作品であります。鉄を入手するために森を破壊していくエボシたちは、作中では悪役のように仕立て上げられていますが、これは現代の人間にも十分通ずる姿勢です。これを悪とするならば世界中の人間が悪に仕立てあげられそうです。

ジブリは森を描くことを得意としていると思えます。その森をふんだんに使用したこの世界観は、とにかくまず美しいの一言に尽きます。そしてその森の中に生きる無数の生物。エボシたちの村も森の中に生きる矮小な存在でしかないと感じました。それなのに傲慢に森を支配しようとするエボシたち。彼女たちに森への理解はあるのでしょうか。森の神であるシシ神と対立するエボシたち。シシ神の昼の顔と夜の顔の違いにも驚かされますが、極めて神秘的であります。宮崎駿監督は今作に、合理主義と神秘的主義の対立、というものを組み入れたらしく納得させられました。今作ではそれが端的に人間と自然の対立というテーマで表されていて、普遍的なテーマを掲げながらも、解決は難しいものであると思われました。

山犬に育てられたサンの存在も素晴らしく、容姿はどう見ても人間なのに人間を嫌います。他の生物も話せるということから、人間への嫌悪感を抱いているということがわかるのですが、人間であるサンが人間を嫌うというのがかなり印象的です。彼女からすると、人間とは「森を破壊する存在」なのでしょう。だからこそ、森を破壊しないアシタカだけを認めたと解釈出来ます。

もっと凄まじいテーマを内在している今作と思いますが、一度見ただけの自分では到底全てを理解出来ません。思えばもう18年近く経っているのですから、ここで長ったらしくいっても仕方ありません。当たり前ですがBGMや主題歌も素晴らしく、そして神秘的であります。個人的なジブリの序列としては、千と千尋、魔女の宅急便に次いで三番目です。日本のアニメ界の真髄を垣間見たような作品でした。
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