ずどこんちょ

もののけ姫のずどこんちょのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
3.5
平成の間に見返して良かったです。さすが日本興行収入ランキングでトップ10入りする平成の名作アニメ。

私自身、人間の身体より数倍も大きいエゾシカ7頭に周囲を囲まれたことがあります。
じっとこちらを見つめる彼らに囲まれると、恐怖と共に妙に神々しかったのを覚えています。
山には人間による我が物顔の支配を物ともしない生き物がいます。巨大な体と野性味溢れる目を見ると、彼らはまさしく限りなく神に近付いた存在だと実感します。

本作で描かれるのは自然の中に住む生き物の神々たちと、製鉄業で豊かに暮らす戦略家の女リーダーを率いた村人たち。農民や百姓ではないところが上手い。タタラ場の人々は製鉄の営みに誇りを持っていますが、それは自然の摂理に反する行為です。
自然の神々と共に戦う女戦士サンと、タタラ場をまとめるエボシ御前の対立。そして、そこに現れたアシタカは「なぜ共生できないのか」と訴えます。
アシタカは自然を壊されてタタリ神になった猪神を殺したことで呪いを受け、村を追い出された身。対立し憎み合うことが憎悪を連鎖させることを知っているのです。
タタラ場の人々の立場も、神々の立場も、そしてアシタカの意見も分かるから、この映画を見るとアシタカ同様に苦悩し、自然と人間の共生を考えるきっかけとなりました。