140字プロレス鶴見辰吾ジラ

もののけ姫の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.5
【アシタカ・ザ・ウォーリアー】

「もののけ姫」というタイトルからヒロインのサンが主人公だと思われるが、昨今のMARVELやDCコミックスのヒーロー像を経験すると、主人公は“アシタカ”のヒーロー譚であり、現在公開中のマイケル・ドハティの「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」における神話の怪獣というキャラ化による自然論の映画のように思えてきた。

冒頭、わりと子供心にトラウマな祟り神との闘いにより呪いを受けてしまったアシタカは、「俺の右腕が疼く…」的な厨二病感のある描写ながら、ランボーを遥かに凌ぐ弓の矢の破壊力で、野武士の人体破壊をやりとげる。アメコミヒーローにおける「大いなる力には大いなる責任が伴う。」というような呪いの力に苛まれながらも、実際に力の元になるのはシシガミの恩恵的なパワー備わっている。途中、大量失血で「死ぬだろ?こんなん!」と思えていても、スタローンを超えるヒーロー力を手に入れたアシタカは重厚な門をサンを担いだ状態で押しあけてしまうのだ。「死ねない。」←ここでスーパーパワーの恩恵と呪いが交差しつつ、兵士の怪我を直したり、目が見えなくなった者を治癒したりとキリスト的な能力も解放。オオカミに育てられたネイチャーウーマン(いっそネイチャーネーチャンと言ってしまおうか…)と比べると神々サイドに片足以上に突っ込んでいるモノが多い。

物語終盤でシシガミやダイダラボッチの出現に際して、進撃した跡に自然が生まれる描写は「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」でも見られる。秋田県のナマハゲなんかも足で地面を踏み鳴らすことによって自然のパワーで実りを与える効果があるようだ。つまるところ、神々が地球サイド・自然サイドである神話的要素に神/鬼のような森羅万象の畏怖をもった“力”を得てスーパーヒーロー能力を得たアシタカが、ケモノ系ヒロインと出逢う、ダイナミックな「マン・ミーツ・ウーマン」な青春エッセンスもあるのだから隅に置けない。「エンドゲーム」という巨大な渦が日本に映画を見せているようだが、宮崎駿はやはり類い稀なるセンスにて、MARVER的よりはDCコミックス的であり、さらにモンスターバースの「タイタンズ(怪獣モノ)」を勇ましく、そしてアニメ的なフェロモンを濃厚に携えてぶちまけていたと解釈すると、やはり天才だな…と思ってしまう。