てながあしなが

もののけ姫のてながあしながのネタバレレビュー・内容・結末

もののけ姫(1997年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

人間と自然の共存を描いた作品。小さいころ見てなかったからこそ今見たわけだけど、これをあの頃に見たら果たしてどんな感想を持っただろうか。

物語は、わかりやすい勧善懲悪ではない。小さい子が見るには、構図は入り組んでる。 主人公でさえも、正義なのか分からない。最初主人公と睦まじげに話していたキャラクターが、悪意なく全てを台無しにしようとする。
自然の言い分は、間違ってないように思える。それでもエボシさまたちの肩も持ってしまうのは、自分が人間であり、何不自由ない社会生活を送っているからだろう。
単純でわかりやすい構図の物語ではないからこそ、こうした自分の中の理不尽をハッキリ自覚できるのだと思う。

ジブリ作品は、とにかく自然を生き生きと、意思を持ったように描くのが好きだし得意なんだと思う。
草木が芽吹いたり生き物が登場するのはもちろんだけど、キャラクターが感情を爆発させるときに風を吹かせて髪を靡かせるあの演出とかもそう。
そうした、自然を制圧するのではなく、自然のダイナミズムをそのまま見つめて活写するのは実に日本的だと感じた。

たたらの火というのは、自然を軽視しテクノロジーを過信する人間のメタファーなのかな? たたらの火をなんとしても守ろうとし、火が消えた瞬間に我に返るエボシさまのシーンが特に象徴的で、そんなことを考えてしまった。

奇しくも今読んでいた本は『銃・病原菌・鉄』。ユーラシア大陸の国がアメリカ大陸やアフリカ大陸よりもテクロノジーの発展に成功した理由のひとつに「鉄」を上げる本書と、鉄の加工(というか銃の製造)に熱を上げ、取り憑かれるエボシさまの姿がリンクした。