Junichi

もののけ姫のJunichiのレビュー・感想・評価

もののけ姫(1997年製作の映画)
5.0
「ともに生きよう…。会いに行くよ、ヤックルにのって。」

【作画】10
【演出】10
【脚本】10+
【音楽】10+
【思想】10+

宮崎駿監督作品で一番好き
劇場版『ナウシカ』を
大人向けにした作品

原作漫画(全7巻)の『ナウシカ』が
最も大人向け作品ですが…

元のタイトルが『アシタカせっ記』
主人公はもののけ姫(サン)ではなく
アシタカ

この作品には様々なテーマが描かれています
・自然と人間との調和と共生
・障害者や捨て子への慈愛
・力としての母性
・女性が指導する女性が中心の社会
・誕生へと向かう死と生

やはり根底にあるのは
・生命(生きること、生活)と
・愛

愛をもって生きることは
「生きろ」
という命令でも
「生きねば」
という義務でもなく
「ともに生きよう」
という勇気づけ

ところでよく批判される
例の黒曜石で造られた小刀

アシタカはこれを
許嫁のカヤから贈られ
最終的に
それをサンに贈ってしまう

大事なことは
この小刀はアクセサリーではなく
生命の象徴(御守り)だということ

カヤは自分の命を
呪いを受けて死すべき運命にあるアシタカに差し出し
アシタカもまた自分の命を
人間との戦いに向かうサンに差し出す

元カノからもらったアクセサリーを
今カノにあげるような
そんな下世話な話ではありません

自分の命を与えるという
高次元の愛の行為です

これこそ
母が我が子に与える無償の愛(母性)

真に勇気ある強い人は
母性愛に溢れています
(当然、性差は無関係)

この母性を
カヤもアシタカも
エボシ御前もモロも
ヤックルもサンも
たたら場の人々も
みな豊かにもっています

愛をもってお互いに支え合う
共産体制のコミュニティと

死と隣り合わせの生を生きる自然

アシタカはこのどちらをも肯定します

大切なことは
両者が恨みや憎しみを抱えて対立するのではなく
お互いがそのままでともに生きられるよう考えること

多次元社会を認めるラディカルな平和主義者
それがアシタカです

平和を巡って争い合う人々にオススメです
Junichi

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