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心のカルテのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

心のカルテ(2017年製作の映画)
4.0
エレン(リリー・コリンズ)は拒食症である。彼女の継母は病院での改善プログラムを幾度か受けさせるが効果はなく、エレンはガリガリに痩せ細っている。エレンは自分は自己管理が出来ていると主張するが、腕の太さを気にし、痩せるための腹筋運動をやめられないでいる。
 またエレンはアーティストであり、かつてはSNSのタンブラーに作品を投稿し、多くのファンを得ていた。しかし、ファンの1人がエレンの影響で自殺してしまったために現在は投稿するのをやめている。
 継母、家にほとんど帰ってこない父親、母親の違う妹、別居しているレズビアンの実母とそのパートナー。エレンは複雑な家庭環境で育った。
 継母のスーザンは最後の望みとして、ベッカム医師(キアヌ・リーブス)に相談する。ベッカム医師はエレンに、食べ物の話をしないこと、最低6週間入院することを条件に治療を開始する。
 エレンはベッカム医師の運営するグループホーム「門出の家」に入居する。そこでは摂食障害に苦しむ若者たちが共同生活を送っていた。
拒食症の人に取材した内容を元にしたヒューマンドラマ映画。
「17歳のカルテ」のように精神を病んだ主人公が医師や患者と交流していく中で病の原因に気づいて立ち直っていくという定番通りの展開ではなく、主人公のエレンは何故自分が拒食症なのか分からず戸惑いながらグループホームの仲間と交流して友情を育てたり自分の作品のファンの男性と淡い想いを交わしたり、家族を交えたグループカウンセリングで罪悪感を増したり自分の作品のファンの男性から片思いされて応えられなくて男性関係でイヤな思いをしたことを思い出して症状が悪化したり、自分の作品のファンが自殺したことに苦しんでいる心情がリアルに描かれていて、主人公と向き合う医師が導くのではなくあくまでも自分の症状や現実との向き合い方のヒントを与える現実主義者であるのがリアル。
エレンの拒食症の根本に愛情不足があること、エレンの母とエレンが授乳療法をしたことをきっかけに回復への一歩を踏み出していく心情がファンタジー的に描かれているのが分かりにくいけど、映像化し難い拒食症について踏み込んだ意欲作です。拒食症の経験のあるリリー・コリンズの熱演が、印象的です。
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