南宮龍八

二つの顔の猟奇的な彼女の南宮龍八のレビュー・感想・評価

二つの顔の猟奇的な彼女(2007年製作の映画)
4.0
主役のチョン・リョウォンが何気に蒼井優に似ているのでポイント高い(笑)基本的には手に負えない女の子に振り回されるバカ男のお話なので「猟奇的な彼女」をモチーフにしたことは言うまでもない。モチーフに・・・とは聞こえが良いが、優しくて可愛いアニと男勝りで凶暴なハニといった別人格を持つチョン・リョウォンは明らかにチョン・ジヒョンのキャラクターを二分した感じだし、ポン・テギュの大学生は言うまでもなくチャ・テヒョンの焼き直し。あからさまにキャラが似ていたり話の展開がソックリだとそれはパクリになりかねないが。冒頭、家族構成や友人関係を見せることでクチャンのひととなりが分かるのに対し、アニの方はまったくの謎のまま物語が進む点でも「猟奇的な彼女」のイントロそっくり。また地下鉄ゲロを髣髴させる遊園地アトラクションでの超ヘビー級嘔吐ネタも無駄なエピソードとはいえ期待を裏切らないチョン・リョウォンの吐きっぷりは見事である(でも汚すぎ!)ヒロインが二面性を持つという設定のためいくつかの面白いエピソードがあり、別人格が入れ代わってクチャンを混乱させるくだりはちょっとしたホラー映画のようで、鏡の中に別人格の幻覚を見るシーンは軽い恐怖を感じてしまうのだ。そして激しい気性のハニに変わることでアニには見られなかった腕っ節の強さが発見できること。ハニに殴られるクチャンのリアクションをスローモーションで見せたり、不良グループと喧嘩するハニのアクションをカンフースタイルの特殊撮影で見せるなど視覚効果が面白い。「猟奇的な彼女」ではヒロインの暴力的なイメージが思ったほど強くなかったのだが、こちらはその辺りをアクション・シーンを使って上手く表現していると思う。アニのかつての恋人の衝撃の事実、アニでもハニでもないもうひとつの人格の存在が明らかになることでクチャンとの関係はどうなっていくのか?というのが後半のポイントであり、散々笑わせておいて泣きのモードにスイッチするあたりはやはり「猟奇的な彼女」的である。全体的に見ると亜流だからといって決してつまらないワケではない。チャ・テヒョンに負けず劣らずのダメっぷりを発揮するポン・テギュとキュートな魅力のチョン・リョウォンのコンビも伸び伸びとした演技をしているし、むしろドタバタ劇や涙腺を刺激する感動ポイントではある意味こちらの方が面白いかもしれない。

09/01/19
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