垂直落下式サミング

エル・ドラドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

エル・ドラド(1966年製作の映画)
3.9
ハワード・ホークス監督の『赤い河』『リオ・ブラボー』などと同じ、ジョン・ウェインを主役にした西部劇。
タイトルクレジットの見事な風景画にのせて流れる楽しげで重厚感のあるテーマ曲が、この作品を一層ゴージャスなものにしている。マカロニウェスタンのテーマのような好戦的な旋律のもの悲しい曲ではなく、この作品の主題歌はあくまでも誰もが楽しめるよう牧歌性を重視したカントリー調。観てからだいぶ経つのにサビの「エル・ドラド~♪」の部分を口ずさむことができるほどキャッチーなメロディだ。
ホークスは賞などとはまっく無縁の職人監督だが、物語の辻褄など合わせなくても観客を満足させるツボは心得ていて、本作でもその手腕を余すところなく発揮している。保安官と流れ者、強い男たちがヤクザな牧場主と対決し町の住人を守る。それだけの話だが、全編がどうだ!これがハリウッドのウェスタンだ!という極上の贅沢品のような自信と風格を湛えているのだ。本来、映画鑑賞とは履歴書の空白を埋めるためのものではなく、ブルジョアの道楽だったのだろう。本当に100円でレンタルされていることが夢のよう。
近年のエンターテイメント映画は正義の味方が悩んだり、悪人には悪人なりの事情があったりと、善悪の決着の付け方にすら明確なロジックが求められる。そんなことだから作り手も観客も理屈っぽくなり過ぎで、なんだか息苦しい。パンフレットや解説本を読んだりモデルとなった事件をWikiで調べるなりして、この話を深く理解し正しい楽しみ方をしなければ面白くないんじゃないかと不安になってしまう。予定調和でもなんでも構わないから、映画はもう少し肩の力を抜いて観たい。