青眼の白龍

殺しのベストセラーの青眼の白龍のレビュー・感想・評価

殺しのベストセラー(1987年製作の映画)
4.1
87年に製作された異色の刑事サスペンス。15年前に起きた証拠保管所の強盗殺人から唯一生還した警官デニスは、事件の経験を書籍化し兼業のベストセラー作家となる。時は流れ、スランプに陥っていた彼の前に殺し屋を称する男クリーヴが現れ「自分を雇っていた男の話を本にしろ」と誘われるが……という話。昔気質の警官と冷酷だが憎めない殺し屋のコンビが、陰謀渦巻く巨大企業に立ち向かう様は実にハードボイルドだ。監督はスティーヴン・セガール主演『アウト・フォー・ジャスティス』を手がけたジョン・フリン。『悪魔の赤ちゃん』や『マニアック・コップ』などのカルトホラーで知られる鬼才ラリー・コーエンが脚本を担当する。

テンポよく巨悪を追い詰めていくストーリーは王道的で意外性こそ少ないものの、主人公二人の緊張感溢れる関係性がスパイスとなっており観客を退屈させることはない。刑事と犯罪者の凸凹コンビというだけでなく、クリーヴが15年前の事件の関係者でもあることから「犯罪者とは馴れ合わないがクリーヴの人柄は嫌いでない」というデニスの葛藤が相乗され、二人の奇妙な関係性が際立っている。躊躇なく殺人を犯すクリーヴが堅物警官のデニスに偏執的ともいえる親愛感情を抱く様子は同性愛を想起させるほどだ。それ故、飛行機の中で腕時計をプレゼントされるシーンは観客の胸に刺さる。我々は既にユーモラスで魅力的なクリーヴに好意を持ち、正義感溢れる寡黙なデニスに共感し、心のどこかで二人の和解を望んでいる。だが、クリーヴは序盤でデニスの命を二度も救っているものの、彼は15年前の事件で友人の警官を殺したクリーヴを恩人とは認めない。終盤、自己犠牲によってクリーヴは初めてデニスの恩人として認められ、二人ははかけがえのない友を手に入れるのである。感動的な結末だ。

主演二人の怪演も本作の魅力である。飄々とした殺し屋クリーヴを演じるのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『カジノ』のブライアン・デネヒー。劇中でボクサーに例えられた巨体の警官デニスを演じるのは『F/X』シリーズや『建築家の腹』に出演したジェームズ・ウッズ。劇場未公開の為か知名度はそれほど高くないが、奇抜なアイデアと魅力的なキャラクターが光る良作である。