イチロヲ

セクレタリーのイチロヲのレビュー・感想・評価

セクレタリー(2002年製作の映画)
4.0
辛い現実から逃避するため自傷行為を働いている内向的な女性が、弁護士の秘書として社会復帰を果たすと同時に、異常性愛の世界へと飛び込んでいく。メアリー・ゲイツキルの短編を映像化している、エロティック・ドラマ。

両腕を縛られた格好のままで従順に仕事する冒頭シーンがインパクト絶大。しかし、本編内はダウナーな会話劇がメインのため、見世物的なエロスは機能していない。あくまでも、女性の幸福論と自己実現を堅実に語っていく方向性。

何よりも、上司がオラオラ系ではなく、主人公の女性と同じく内気な性格付けになっているところが良い。「秘書という単調な仕事を引き受けてくれてありがとう」という、相手を尊重する気持ちを根底にしているところに、倒錯愛の醍醐味がある。

肉体ではなく精神で繋がっていることを示唆しながら、「主人も隷属する者に隷属している」という、倒錯の極地へと落とし込んでいく。あえて欲を言えば、ふたりの肉体関係を不明瞭にしたままでドラマを終わらせて欲しかった。
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