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おとし穴のarchのレビュー・感想・評価

おとし穴(1962年製作の映画)
4.2
「なぜ殺されたのか」
多くの映画がその上映時間を掛けて解きほぐすその問いを、この映画は永遠の謎として不気味に振り回す。
殺された男は幽霊として事件にまつわる人達を傍観していく。当たり前に幽霊がいる世界は奇怪で、物語が深まり、死者が増えるごとに「ここが地獄だ」と言わんばかりの不気味さをもたらしていく。

この映画には主人公という「死者の傍観者」以外にもう一人傍観者が存在する。それは少年である。最初から最後まで一切口を開かず、少年の無垢さすら放棄したような存在として、彼は全てを傍観する。
そしてこの物語はこの「生者の傍観者」の行方を長回しによるカメラで追い、その逃走によって完結する。
彼が何か口にしたら事が解決したのか、それは分からない。だが、彼の沈黙と逃走が転がった4つの死体をまるで幽霊が蒸発したが如く、無かったことにしたのは言うまでもない。
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