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Mr.ウッドコック -史上最悪の体育教師-のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.6
 アメリカ中西部ネブラスカ州のとある学校、怠惰にバスケに励む部活動の生徒たちの表情を、物陰から顧問の先生がじっと見ている。体育教師のMr.ウッドコック(ビリー・ボブ・ソーントン)は生徒たちを一列に並ばせ、社会に出て通用する人間になるにはを叩き込みながら、スパルタ教育を施す。肥満児のジョン・ファーリーはその姿に震え上がっている。あれから13年後の現代、『過去からの解放』という著作がベストセラーとなり、一躍人気作家に躍り出たジョン・ファーリー(ショーン・ウィリアム・スコット)は故郷であるネブラスカに凱旋する。町会議長の面会もあり、何もない街に久しぶりに降り立ったジョンは若い頃を思い出し、物思いに耽っていた。幼い頃を過ごした生家に戻ると、母親(スーザン・サランドン)の歓待を受ける。父親が死去してから十数年、ずっと女手一つでジョンを育てた優しい母親に、新しい恋人が出来たという。間髪入れずに家にやって来たその男は、信じられないことに学生時代のジョンを散々こき使ったウッドコック先生だった。プールの練習中、痙攣し溺れた母親を先生は介抱した。それが縁で2人は付き合い始めたという。

 『過去からの解放』という皮肉めいた小説が大ヒットしているジョン・ファーリーは、然し乍ら過去に囚われている。『ラースと、その彼女』同様に彼の中には肥満児だった頃の苦い記憶と、スパルタで鳴らしたウッドコック先生の厳しい教えのトラウマがあった。はっきりと描かれていないものの、一人っ子の彼は母親の愛情を一手に受けて今日まで来たが、その大切な愛情をスパルタ教師に奪われそうになり狼狽する。必死に彼の弱点を見つけようと東奔西走するジョンの姿は笑えるが、彼の皮膜を剥がそうとする度に自身の小ささと向き合わねばならない。少年時代、ジョンと同じようにウッドコック先生の標的になり、今もネブラスカでピザ屋を開業するネダーマンとの旧交、人気作家のスケジュールをコントロールする女性マネージャーのマギー、そしてかつての初恋の人トレイシーら個性的な面々を配しながら、映画は主人公のトラウマの克服とイニシエーションをユーモラスに描く。監督であるクレイグ・ギレスピーは親しき仲のコミュニケーションの祖語とズレを度々描く。大人になってもトラウマが拭えない『ラースと、その彼女』のラース・リンドストロム(ライアン・ゴズリング)同様に、子供のまま大人になった主人公は代父との出会いにより、大人へと成長を果たすのである。
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