こたつむり

2000人の狂人/マニアック2000のこたつむりのレビュー・感想・評価

2.9
★ ヒィィィィィィッ!ハァッ!

率直に言って、邦題がヤバいですね。
巨人じゃなくて狂人ですからね。放送コードに引っ掛からないのでしょうか。字面を見るだけで、魚が飛び跳ねたような気分になりますね。

その邦題が指し示す“狂人”。
それは、アメリカ南部にある町の住民のこと。つまり、その町には2000人もヤバい人がいるわけで。しかも、この人数は町の総人口と同じ。つまり、町自体がヤバいのです。

そんな町は100年祭の真っ只中。
浮かれています。心底、楽しんでいます。
南部の陽気な音楽に合わせて「ヒィィィィィィッ!ハァッ!」なんて歌っています。出川哲朗さんみたいに「ヤバいよ、ヤバいよ」と言いたくなりますね。

そして、そこに現れるのが外部の人間。
彼らは自主的に訪れたのではなく、町民に誘導されて「祭りに参加しろ」と言われるのですね。「一緒に叫べ」と。「歓喜の声で楽しめ」と。ごり押しされちゃうのです。

はたして旅人は祭りを堪能できるのか…?
勿論、それは観てのお楽しみ。ちなみに本作の製作は1964年。ゾンビ映画の始祖である『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』よりも前に作られている…というところがポイントですよ。

ただ、ぶっちゃけた話。
現代の視点で鑑賞すると面白くない物語です。脚本や演出が粗いのですよ。だから、当時の価値観では“狂人”だったとしても、それほど針が振り切れたように見えないのです。

つまり、狂っているのは彼らか、僕の方か。
その境界線が見えなくなっているのが21世紀。
そう考えると、その事実が一番怖いことなのかも…しれませんね。

ただ、歴史的に意義がある作品であることは間違いなし。本作が“ある部分”において、後進に道を切り拓いたのは事実ですし、物語の根底に流れる空気感は見事な限り。“他人が喜ぶ理由が判らない”というのは薄気味悪さを併せ持っていますからね。着想は素晴らしいと思います。

まあ、そんなわけで。
現代の技術でリメイクしてみたら、違った雰囲気の作品になりそう…と思って調べてみたら、実際にリメイクされていました。噂によると、本作以上にノリノリらしいので…僕は遠慮しておきます。
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